カントクたちがAVを撮る理由

第4回 TOHJIRO(後編)
「心のシャッターに指1本ぶんの隙間を」

──女優が素を出すことを、監督は「子供返り」と呼んでいますよね。よそのメーカーに何本も出ていて人気のある女優を、心のなかまで丸裸にして、ひとりのオンナとしてイカせる、というのもTOHJIRO作品の売りのひとつですが、やはり初対面となる監督面接を重視します?

「すごく重視しますね」

──監督面接の場で会って、相性の合わない女の子もいるわけですよね。

「会って、このコは違うなと思ったら5分で終わりです。撮る気がないコとだらだらしゃべっても仕方ない」

──このコならイケる、というのもすぐにわかりますか?

「5分かからないですね。まず、向こうから先に、溜まっている気持ちをバーッとしゃべって、大泣きします」

──そうやって心を開かせる方法は?

「そのコの話をよく聞いてあげることだよね。何で社会に対してかたくなに心を閉ざしているのか? その原因は幼少の頃? とか原因を一生懸命に探る」

──幼い頃に虐待を受けていたりとか?

「そのケースは多い。歴史が長いほど大変なの。高校時代にレ●プされたというのはまだ楽。それが小学校時代だとタチが悪い。心のなかにレ●プ魔や変態野郎がまだ住んでいるんです。それをヘンな話、僕と(男優の加藤)鷹さんでお祓いするんです」

──加藤鷹さんが2013年末で引退したとき、監督は「加藤鷹は俺の分身で戦友」だったと、惜しんでいました。2人の関係は、かなり特別なものだったんですね。

「男優って現場でしか女優と会わないでしょ。鷹さんがいうには『どんなコが来ようが、監督がそのコの心のシャッターを5ミリでも開けておいてもらえば、俺の指1本入るくらいの隙間があれば、シャッターを全開にしてやる』って。『女の子が心をロックしたままだと、どんなに俺がやっても無理。いつも監督が隙間を開けておいてくれるからパートナー関係が成り立つ』って。心の鍵を開けておくことが僕の役目でしたね」

──指1本入るくらいの隙間を開けるために、監督が心がけていることは何ですか。面接で女の子の心を掴めば、現場ではまず失敗はしない?

「違います。現場のスタッフ1人1人の気持ちがすべてなんです。女優がよくいうには、よそのメーカーの撮影では、スタッフが早く撮影を終わらせて帰ることを第一に考えている現場が多い、そういう空気が充満しているって。TOHJIRO組はすごいハードなことをさせているように外からは見えるけど、ワンプレイが終わるごとに女の子をおんぶしてあげて、お風呂にお湯を張っておいて入れてあげるんですよ」

──普通はシャワーで済ませるのに。いちいちお風呂に入ってもらっていたら、撮影にすごい時間がかかりますね。

「うちは違います。毎シーン終わるごとに、お湯を溜めて違う色の入浴剤を入れて用意しているんだよね。早くやれよ、なんてことはいっさいいわないどころか『いっぱいイッて疲れたならちょっと寝なさい』と布団まで用意するから、女の子もどんどん元気になってきて帰りたがらないんだよね。でも、これは映画もAVも同じ。演者さんが気持ちよくやれる環境を作ってあげるのが僕たち裏方の仕事ですから」

──AV監督業の魅力、醍醐味は何なのでしょう?

「26年目になりますけど、AV監督をやらせてもらって、こんなにも飽きないで続けてこられた理由は何かというと、同じ女の子はいないんだよね。同じプレイをしてもリアクションは全員違う。心がみんな違う。タマネギの皮を剥くみたいに、剥いていって何が出てくるのかなって見てるのがわくわくしますね」

──26年間、新鮮な刺激は変わらない?

「うん。近年、ドラマ物はやめてライヴ物ばかりになったじゃないですか。そのコが右に転ぶか左に転ぶか、どう流れていくのかわからないわけね。感情をうまく出せなくて、現場でもプライベートでもイッたことがないというAV女優もいるでしょ?」

──たくさんいますね。

「そういうコと対峙することは、異種格闘技戦だよね。エロにならないかもしれない。でも、そのなかで戦っていくのが楽しいね」

──そして心の病まで全部吐き出して、イッて、大泣きしたコは子供に返っちゃうわけですね。

「本当に7~8歳の子供に戻ります」

──昔と今で、AV女優の気質は変わってきていますか?

「本質は変わらない。テレビや映画とは違うんだよね、AVに出るということは。女の子のAVデビューが決まったとき、喜ぶ親はいないわけですよ。こういう業界に流れてくるコって、お金稼ぎたいからとかいろいろな理由をいうけど、そもそも今生きているなかで迷子になっていないコは、AVに来ないんですよ」

──あー、自分探しの途中の迷子。

「生きる場所が見つからない、生きている実感がないというコにとってはAV業界はすごく生き甲斐がある場所になる。でもそういうコに『今自分がやってることは楽しい?』と問えばたいてい泣くんですよ」

──生き甲斐を求めてAVに来たはずなのに、実は楽しくないということ?

「要するに、自分が変わりたい、居場所にしたいと思って飛び込んだのに、そこでまた虚構を演じなきゃいけないから、本当の自分をさらけ出せないわけ。そういう苦悩があるんですよ」

──なるほど。だから監督は、そういうAV女優たちを7~8歳の子供に返してあげたいと考えるわけですか。

「閉ざしていた心を開放して、楽にしてあげたいわけですよ。女の子の心のシャッターが開いていて、ガチで攻められるから、男優さんはやりやすいと思う。ショー的なカラミをやらなくていいんだから。だけど、女の子に『乳首吸われても感じなかったら声出さないでいいよ』っていうと、本当にいいの? 間がもつのかな? と思うわけですよ」

──AVという商品ですからね。

「見せるエロというのもある。それは否定しないんですよ。メキシカンプロレスもいいじゃないですか。でも、僕が撮りたいのは、それじゃないんです」

──女性は男を興奮させるために演技で喘ぐことはあるし、それによってSEXが盛り上がるわけですからね。

「よく鷹さんがいっていた。『森下くるみと出会ってなければ、ここまでガチンコというものに執着しなかった』って。鷹さんはくるみちゃんと会うまで10年男優をやってきて、自信満々だったわけだよ。俺のチ●ポをもってすれば喘がない女なんていないと思ってたわけ。それが、くるみちゃんはウンともスンともいわないから自分の無力さを感じたわけ(笑)」

──加藤鷹、初の挫折。

「挫折。他の女優は鷹さんに合わせてくれてたわけだよね、声出して」

──「王様はハダカだ!」といってしまった森下くるみ、おそるべし、だったんですね。

「うん、本物の『うぶ』だった」

──さて、今月でピンクチェリーが閉局するんです。それで過去の名作特集として、監督がマックス・エーで撮った『監●ボディドール』の観月マリ、西野美緒編の2本が放送されます。ひとことお願いします。

「『監●ボディドール』は思い入れのあるシリーズで、タイトルも僕がつけたんだよね。観月マリのはマザコン青年が女の子を監●して変態プレイに走る物語で、西野美緒のはその犯人役が加藤鷹さんで、いずれもコレクターの狂った男と女の子の世界を、凝った美術とともに描きました」

──ありがとうございました。今後のTOHJIROのビジョンを最後にお願いします。

「映画を作るためにドグマを旗揚げしてから、もう14年が経ちました。早く映画の2作目を撮らなくちゃならないとすごく焦っています。でも、AVへの情熱も、これっぽっちも冷める気配はないですし……」

──悩める50代、TOHJIROですね。今日はどうもありがとうございました!

Profile

TOHJIRO(とうじろう)
1956年東京都生まれ。小学生時代から映画業界を志し、1986年4月、初監督作品『ゴンドラ』完成。1989年、V&RプラニングでAV作品「ブルーフィルム」を初監督。1997年、ソフト・オン・デマンドへ移り、森下くるみとのタッグで業界を席巻。2001年、AVメーカー「ドグマ」を設立し、同社総帥として現在に至る。代表作に『青い性欲』『白い性欲』『赤い性欲』『うしろから、ギュッと』『拘束椅子トランス』ほか。

Profile

文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

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