カントクたちがAVを撮る理由


第44回 タイガー小堺(後編)
「自分に来る電話は一番じゃない」

前編はこちら→「パンチパーマで眉毛なしのAD」

つまらない日常を破ろうと飛び込んだ先は、業界ナンバーワンの厳しさで知られるAV制作会社。そこで必死に働き続けていた青年に、2008年とうとう神様がチャンスを与えてくれた。

──最終的にAV監督になれたわけは?

「インジャン古河さんの制作会社のほうにいくことになったんです。で、ここで監督にならないと一生ADで終わるなと思って、一生懸命企画を出していたときに、ムーディーズのプロデューサーの人と出会って、たまたま『世界で一番大きなチ●ポを持つ男のSEX』(ROOKIE) シリーズを任されたんです。若い人と仕事したいということで、僕にチャンスをくれたんです。2008年くらいのことでした」


──それが監督第1作?

「その前に監督した作品はあるんですけど、後のステップになったのはムーディーズのその作品なんです。この機会を逃すともう無理だと思って、めちゃくちゃ頑張って撮ったら、いい評価をもらえて、仕事がちょろちょろ入ってくるようになったんです。AD時代の僕が遭った数々の仕打ちを(笑)、僕が憶えてないことまでいろんなプロデューサーの人が憶えてくれていて、『タイガーが監督になったんなら、いろいろ苦労してたの知ってるからウチで撮るか?』ってすごくいってもらえた。そのとき僕26歳くらいなんですけど、女優のなかにも松嶋さんにシゴかれてる僕を見てる人がたくさんいて、会うと『タイガー、監督になったの? 耐えてよかったじゃん』とかいわれて(笑)」

──いい話ですねぇ。

「カメラマンとかスタッフもそういう感じで、最初に電話すると『タイガーだったらいくよ』っていってくれて。すごく協力してくれたんですよ」

──ファンとして長くAVを見てきて、監督にもなった。ご自身の性癖というのはどのように育まれたんでしょう?

麒麟さんはゴックンが好きだし、沢庵さんは凌辱という、みんな看板があるから羨ましいと思ってるんです。僕、h.m.pで痴女を撮ってるんですけど、めちゃくちゃ痴女が好きかというと、K*WESTさんほどじゃない。つまり、エロいことは好きだけど、コレっていう枠はないんですよ」


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──そういう監督がいて普通だと思います。じゃあ巨乳が好き、お尻が好き、そういう部分でいうと?

「僕、尻物もパイズリ物も撮ってるし、単体物も企画物も撮ってますけど、特にここっていうのはないんですよ。何か1個、『タイガー小堺はこれがメインだ』といえる物がほしいんですよね」

──おかずとして抜いていたのはどんなAVだったんですか?

「基本的には痴女物が多いです。男が寝てるビデオが好きなので」

──風俗の客状態で攻めや奉仕をしてもらえるやつですね。

「優しいAV女優が出ているのが好きですね。中学時代から、AV女優なら俺にもヤらせてくれるかなと思って見てたんで」

──そう思わせるファンタジーを、今は撮る側に回って提供してくれている、じつにいい監督ですよタイガー小堺は。


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「でも、やっぱり得意ジャンルがないのが悩みなんです。沢庵さんだといろんなメーカーから『脅●スイートルーム』みたいなのをウチでも撮ってください、麒麟さんもいろんなメーカーからごっくん物を撮ってくださいってオファーが来るじゃないですか。そういうコンスタントな仕事の入り方というのはなくて、毎月不安定なんですよ、ずっと。シリーズ物もほとんどないんで」

──でも、作品数をこなしてる。その秘密はどこにあるんですかね。

「基本、断らないんです。絶対受けるんです。どれだけ(報酬が)安くても、撮影日がかぶらない限りは、どれだけ忙しくても絶対受けるようにする。あと最近、量から生まれる質というものが絶対あると思ってるんですよ」

──B級映画の世界と同じですね。量が質なんだと。

「とにかくいっぱい撮らなくちゃと思ってます。月に1本だけ好きなものを撮るというのも理想ですけど、AV監督はどんどん撮り続けないといけないと思ってるんで。撮り続けてると、たまに奇跡みたいな現場があるんで」


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──神が降りてくるような瞬間と出会えるんですね。特に何か作品名を挙げると?

「上原亜衣の一番最初の100人中●し作品『100人×中●し 上原亜衣』(本中)の現場は奇跡の連続という感じでした。あれが一番ですね」

──2014年のですね。あのパッケージ写真のインパクト。亜衣ちゃんがゾンビに襲われて逃げているみたいな。あれが引退作のパケにもそっくりリンクしたわけですもんね。

「あの写真を選んだプロデューサーがすごいんですけどね。あれ現スチ(現場のスチール写真)ですからね」

──そうだったんですか?

「パッケージは別にキチッと撮ってたんですよ。ファンに囲まれてる可愛いやつを」

──あれがヒットしてタイガー小堺監督の名前もさらに広まった格好ですよね?


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「そうです。あの年、実は各メーカーから仕事的には干されてたんですよ僕。本数をやりすぎたせいで編集が粗くなっちゃって、そういうのはやはりメーカーサイドもすぐ感じますよね」

──月最高何本?

「15本くらいですね。忙しさで考える余裕もなくなってて、鬱病みたいになっちゃって、ヤバかったんですよ」

──まともにこなせもしないのに何で仕事を受けちゃうんだろう……という自己矛盾などもあって?

「そうですね。マジで台本全然書けなくなってコピペとかしてたんてすよ」

──過去に撮ったものを。

「はい。だから、あの年はちゃんとやらなくちゃダメだって考え直した年でもあるんです」

──その後、女性不信の解消は?

「されてないですよ」


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──東京に来てからの恋愛は?

「10代のヒモだった頃から、つき合う相手はヤバい女ばっかりなんですよ。電話に出ないと200回とか電話してくる奴ばっかり」

──着信履歴に200件?

「そうです。東京に出てきて監督になり始めた頃、26くらいから2年つき合ったコが一番ヤバくて、いきなり家にいたりするんですよ。現場が終わるまで家の前で待ってたりとか。結局そのコと一緒に住むんですけど、住み始めたときは毎日、今日は何の現場か報告しないといけない。『今日ハメ撮りするの?』まで聞かれて。年は3つ下で顔はめちゃめちゃ可愛かったんですけどね」

──監督に女性をそうさせてしまう何かがあるんですかね?

「引き寄せてるっていわれるんですけど。ずっとそういうケースばかりだから」


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──まず、日常どういう女性に惹かれがちなんですか?

「結局そういうイタい女に惹かれがちなんですよ。たとえば現場でも、ワガママで評判悪い女優を好きになっちゃうんです(笑)。イタい奴のほうが嘘はなさそうじゃないですか。そうやって、ちょっとブッ壊れてるようなコに惹かれてしまう。僕、AV女優の素顔に迫ろうとかは興味がないんです。自分をきっちり作って演じてる、仕上がっている女優が好きなんです。AV女優ってプロレスラーだと思ってるんですよ」

──なるほど。

「AV女優はツイッターに『オナニーした』ってのはよく書くんですけど、エロさとか淫乱を売りにしてるなら嘘でもいいから『男とセックスした』って書けよと思うんですよ。こっちのほうが夢があると思うんですよね」

──業界内で、どういう立ち位置にいる監督だと自覚されてるんですか?

「たまに感じるのは、僕に仕事が来るとき、一番に電話かけてきてないだろうなって」


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──第一候補の監督に忙しいって断られて、それでタイガー小堺監督に電話してきた。

「僕はたぶん3番目か4番目かなと思ってるんです。で、そういうときに、結果的に一番うまく撮る監督がカッコいいなと思うんですよね」

──第一候補の誰々よりこっちのほうがいいじゃん、ていうね。

「テイストは違うけどよかったなとか。あと、永遠の若手みたいな監督でいたいです。僕、AV監督になってなかったらAV女優としゃべれないし、僕みたいな奴と女の子はしゃべってくれないと思ってるんですよ。精神的には落ちこぼれた中学生の頃と変わってませんね」

── 一度こういう作品を撮ってみたいというのはありますか?

「何ですかねぇ、V&Rがやっぱり好きだったんで、AV監督はヌケないっていわれるAVを撮り続けないといけないっていう義務があると思ってるんですよ。上原亜衣の『100人中●し』にしても僕が出した企画で、あれはたまたま売れたんですけど、元ネタは高槻(彰監督)さんの『妄想犯』(ムーディーズ)なんですね。あれがすごく好きで」


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──あーなるほど。ファンの男たちがAV女優を追い回すというね。

「AVって、バカな大人が真剣に考えてこんなことやってるんですよっていう姿を見せないといけないと思ってるんで、そういうのを1年に1回は撮りたいですね。すごくヌケるAVは僕じゃなくても優秀な監督たちがいっぱいいる。でも、こっち寄りの企画物を撮れる人は少なくなってると思うんです。V&Rの遺伝子も薄れてきた業界なので」

──あと、来た仕事は断らないというのは変わらないんですね。

「ですね。上原亜衣ちゃんが引退したんで、ごはん食えなくなるかもって今思ってるんですけどね(笑)」

──上原亜衣ちゃんの座付監督状態だったから、彼女の引退は痛いですねぇ(笑)。

「その前は琥珀うたの座付監督だったんです。僕、けっこうエポックメイキング的な女優さんに助けられてるんです」


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──人には恵まれていますよね?

「ほんと、人との出会いには恵まれています。いまだにスタッフも女優さんも、僕だからいいですよっていってくださることがあるんですよ。助監督によくいわれるのは、スタッフも女優もみんな『自分がいなければタイガー組は成立しない』って思っている人が来てくれているって。僕が現場で一番ポンコツなんで、亜衣ちゃんも、私がいなきゃ作品は成立しないって思ってつき合ってくれてたと思うんですよね」

──やっぱり、ヒモの才能はあるということなんですよ。羨ましすぎます! というわけで監督、楽しい話をありがとうございました!

Profile

タイガー小堺(たいがーこさかい)
1982年兵庫県生まれ。県下有数の中高一貫進学校に入るも落ちこぼれ、AVでオナニー三昧の暗黒な思春期を過ごす。2年間の引きこもり生活を経て東京の大学に進学するも1年で休学し、2003年にAV制作会社「古松映像」に入社。業界の名物監督だった松嶋クロスに師事し、ADとして過酷な修行の日々を送る。2009年『世界で一番大きなチ●ポを持つ男のSEX』(ROOKIE) シリーズで頭角を表す。

Profile

文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

放送情報

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