カントクたちがAVを撮る理由


第84回 貞邪我(後編)
「ドラマを支えるオリジナルBGM」

前編はこちら→「武道館ライブの後に残った大借金」

「オルガ作品のベースには自分の時代体験が持ち込まれているんです」という貞邪我監督。彼の「昭和」へのこだわりが多くの名作に結実した。

──昭和が香るドラマメーカーとしてオルガが発足したのは、貞邪我監督の意向だったんですか?

「スポンサーとの打ち合わせの中で『日活ロマンポルノ』風ということで一致してました。淫靡なエロスを見せつつもドラマとしても作り込むという」

──スポンサーも同年代の方?

「そうですね。僕らの目指すところとして、『Vポルノ』という言葉を作りました。VシネマとAVとの中間ぐらいの立ち位置ということです。妄想力をかき立てる官能型AVドラマを目指そうと。時代背景がレトロ風なのも年配ユーザーをターゲットにしたからです」


──キャスティングは?

「候補の女優さんは数々いたんですが、まずはこけら落としには北条麻妃さんと川上ゆうさんに出演していただきました。そして2013年6月、『人妻炎情 時代の掟に背いた禁断情交 北条麻妃』と『昭和性虐物語 逃れられない主従姦通 川上ゆう』の2作品でオルガがスタートしたんです。その後はいわゆる実力派熟女優と呼ばれる女優さんに片っ端から出演していただきました。さすが皆さん、素晴らしい熱演をしていただきましたよ」

──当時、ロマンポルノ風味とか昭和のエロスとうたわれたAVは、FAプロ作品などいくつかありました。他社作品を意識していた部分はあるんですか?

「ええ。意識をするというよりも研究させていただきました。大昔からつき合ってるVTRカメラマンと温泉合宿に行って(笑)、ドラマメーカーのAVを何十本も鑑賞して 各メーカーさんの特徴を把握研究したんです。『FAプロのヘンリー塚本監督の撮り方はこうだよね、でも僕が撮るとこうなるよ』と、僕の気持ちを彼に伝えて」

──カメラマンは一心同体の相棒ということですね。

「そうです。オルガにしかできない特徴をどう作ろうかと、2人で突き詰めていきました。FAプロさんもながえスタイルさんも、確固たる独自の作風が確立されているので、改めて敬服しましたが、じゃあオルガはどうしようかという話になるわけです。FAプロの作品は大好きですけどマネしてもダメなわけだし、同じものを作ろうと思っても作れないわけですし」


『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』(レッドチェリー)

──それが個性というやつですからね。そこで貞邪我監督はどういう作風を見いだしたんですか。

「ドラマ部分に感情移入してもらいながらカラミへどう繋げるかが課題でした。たとえば1つの作品に喜怒哀楽の4要素は必ず入れること。そうなるとドラマ部分が増えちゃうんですけどね」

──なるほど。目指せ日活ロマンポルノですからね。

「あと、ドラマって音楽に左右されるところがものすごくあって。挿入する音楽を間違えると意図しない雰囲気になってしまう。だから音楽は毎回録りおろしてます」

──え、毎回オリジナルの曲を?


『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』(レッドチェリー)

「以前一緒にバンドやっていた人間に頼んで作ってもらってます。毎回これこれこんな感じだって僕がイメージを伝えて、ここダメ、ここ直そう、ってやりとりを経て、主人公のテーマと、その作品のタイトルのテーマができあがるんです。そしてそれらの曲のバリエーションを作る。フルートとかバイオリンとか違う音色、あとアップテンポにしたものなど」

──PCソフトで作ってるんですか?

「はい。本当は生楽器で録音できればいいんでしょうけど、予算もかかるし……(笑)」

──さすがミュージシャンですね。

「それが自分のこだわりなんです。なにもそこまでしなくてもってよく言われるんですが……(笑)」

──確かにオルガ作品は、音楽でグッと情感が盛り上がるシーンが多い。オルガ旗揚げの2作品は、売り上げの数字的にはどうだったんですか?


『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』(レッドチェリー)

「当初は新参メーカーゆえに相当苦労しました。でも時間をかけながらも徐々にリクープ中です。このコンセプトは浸透するまで時間がかかる。そのかわり賞味期限が長いというのが正直な感想です。まだまだユーザー開拓を仕掛けていきます」

──オルガの中に別レーベルもできて、最近ではなぎら健造監督も起用してますよね。それはメーカーにとってどういう位置づけなんですか?

「ドラマAVでは確固たる地位を築いている『なぎら建造監督作品』をタイアップリリースするという図式です。相乗効果が生まれることでイメージアップや売上げアップを狙っています」

──他社のAVにはない、オルガだけのこだわりの部分を、あらためて聞かせてください。

「ただのSEXシーンを見たいのではなく、女性がSEXするにいたるまでの感情の動きや周囲の状況を見たい人たちに向けて作られているドラマ作品です。そしてそれをオリジナルの音楽が支えています。たとえ似たようなシーンだとしても、前に使った同じ曲を使うことはしません。北条麻妃のテーマを1曲作っても、別の作品に出てもらったときは、また新たな北条麻妃のテーマができるわけですよ」


『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』(レッドチェリー)

──そうか。作品ごとに川上ゆうのテーマ、波多野結衣のテーマがちゃんとあるんですね。

「ありますあります」

──そう聞くと、サントラ盤が欲しくなってきました。前編の記事でも触れましたが、今月はレッドチェリーで、貞邪我監督が過去に撮った谷原希美、三浦恵理子、桐島綾子、波多野結衣、飯岡かなこの名作をオムニバスにした『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』も放送されます。この中で、飯岡かなこのパートは、『ブルーフィルムの若妻 〜夫には言えない淫らな秘密』が元になっていますが、ブルーフィルムなんて、よくぞ今の時代にという題材ですよね。貞邪我監督が物語を作るときは、どういうところから着想を得るんですか?

「昭和といえば何? というキーワードをいろいろ考えてあるんです。たとえば飯岡かなこのは、ブルーフィルムというテーマでずっと1本作りたかった。このために8ミリフィルムのカメラをネットオークションで買ったんですよ」


『昭和人妻官能絵巻【第二章】 〜背徳に悶える妖艶な肉体達〜 [ディレクターズ特別編集版]』(レッドチェリー)

──桐島綾子の『下宿屋女将の淫欲 〜熟れた肢体に群がる男達〜 』も、昭和の頃はいっぱいあった下宿屋が舞台。借金取りの男に抱かれつつ、最後は下宿している純情な青年と寝てあげるといういい話。

「僕も下宿経験があったんです。高校2年のとき、親父が転勤で遠くに引っ越したので、僕だけ下宿して高校に通うことになったんです。僕はバンドをやってて女の子からキャーキャーいわれていたので、他の下宿人からのイジメに遭ってたんですよ」

──お前だけ女にモテやがってコノヤローって。

「モテた記憶はあまりないのですが、なにせ目立ってたんでしょうね(笑)。下宿屋に帰るとおかずは誰かに食われ、ごはんとみそ汁しかない。しかもみそ汁の具なんて見当たらず……みたいな(笑)」

──波多野結衣の『恥辱の愛 〜肉体奉公する裸婦画の女〜』は、人妻が借金返済のため、画家のヌードモデルになるという、昭和30年代を感じさせる物語。波多野結衣の演技も素晴らしいと思いました。

「ピカイチです。“世界のハタノ”と呼ぶにふさわしい女優だと思います」


『『白石茉莉奈』狙われたジョギング奥さま!豊満な体がエロすぎてス●ーカーに犯されたジョガー!』(レインボーチャンネルHD)

──『めかけ恋女〜逃れられない淫虐の関係〜』は、はじけた淫女の役も多い三浦恵理子が、純情な青年と恋に落ちる哀しい女をしっとりとした芝居と濡れ場で見せています。三浦さんの新たな魅力に触れました。

「桜の木の下で女がホロリと涙をこぼすシーンがあるんですが、自分としては目薬対応でもよかったんです。でも彼女は根がすごくマジメな人だから、本当に涙を出すと言って聞かない。だけど待てども待てども涙が流れ落ちてこないから、もう無理だなと『はい、カット』って止めたんです。そうしたら、『今涙が出たところなのにィ』ってふくれてるんです(笑)」

──見た目と違って、おきゃんなかわいらしさがある人って聞いてたけど、いいエピソードですね(笑)。

「彼女は役者魂のある女優さんですね」

──「昭和」の題材で、今後撮ってみたいものは具体的にありますか。


『『白石茉莉奈』狙われたジョギング奥さま!豊満な体がエロすぎてス●ーカーに犯されたジョガー!』(レインボーチャンネルHD)

「ストリップ物をやりたいんです。過去にストリッパーだった女性という設定では撮ったことがあるんですけど、次は現役のストリッパーの話を撮りたい。昭和の女の生きざまの裏には必ず悲しみとか情念があって、SEXするためには必ず理由がある。その理由を比較的悲しく描くのでダメなんだけどね」

──ダメなんですか。

「もっとポップに描かなくてはと思うんだけど、どうしても哀愁の方向にいってしまう……」

──演歌になるわけですね。

「そう。オルガ的演歌になっちゃう(笑)」

──また演歌が似合う人材が豊富ですからね、熟女界は。今、撮りたい女優はいますか?

「翔田千里アゲインですね」

──引退されましたよね。


『『白石茉莉奈』狙われたジョギング奥さま!豊満な体がエロすぎてス●ーカーに犯されたジョガー!』(レインボーチャンネルHD)

「それが、復活するかもしれないっていう噂があるんです。オルガ発足第3弾『しのび逢瀬 崩れ堕ちる背徳の肉体 翔田千里』を撮ったとき、自分で脚本を書いておきながら、翔田さんのあまりの熱演に思わずホロリときました。人妻が出会った不倫相手と過去の話をしているシーンで彼女は本泣きしているんですよ」

──いいシーンをものにできたんですねぇ。

「翔田さんはもう1回撮りたいですね」

──どうしてもアイディアが出ないときというのは、どうやって打開してるんですか?

「僕はいつもネタ帳をそばに置いてるんです。テーマやコンセプト、キーワードから小道具に至るまで、思いついたらメモしてるんです。なんせ最近物忘れが激しいので(笑)、そうして断片的なアイディアを結合させていくんです」

──それは頼もしい。では、これからも昭和を意識した物語をAVで撮り続けるわけですね。

「そうですね。あくまでも僕の昭和観なので自分の経験値としてのエロチシズムを描写できればうれしいですね。そして同じ時代を生き抜いて来た同輩の方たちに少しでも共鳴していただけるよう、これからもがんばります」


『『白石茉莉奈』狙われたジョギング奥さま!豊満な体がエロすぎてス●ーカーに犯されたジョガー!』(レインボーチャンネルHD)

「オルガの作品には賞味期限がありません」と貞邪我監督はいう。発売された時点ですでに懐かしい昭和のエロスは、まるで演歌歌手の持ち歌のように何年経っても色褪せることはないのだと言われれば、確かにうなずける。多額の借金は、数年前に無事に完済したとのこと。平成も終わろうかという今、そして今後、ますますオルガの昭和物が渇望の対象となるだろう。貞邪我監督、期待しています!

Profile

貞邪我(ていじゃが)
1957年岩手生まれ。1983年、ロックバンド「JAGATARA」にドラマーとして参加。1990年、自身がマネジメントを手がけるバンドの武道館公演で巨額の借金を背負い、AV制作会社に入社しコツコツ返済開始。2000年、某大手アダルトメーカーに移籍。2008年、同社作品で監督デビュー。2011年に同社を解雇されて路頭に迷う。2013年、AVメーカー「オルガ」を立ち上げ、独自の昭和エロスを追求し続ける。

Profile

文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

放送情報

今月の貞邪我監督作品はこちら


スカパーアダルト番組検索

Backnumber

ご契約はこちらから

ご契約はこちらから WEBなら24時間受け付け

テレビでみるなら

WEBでのご加入はこちら

スマホ・PC・タブレットでみるなら

スカパー!アダルトオンデマンド 詳しくはこちら

閉じる