アダルトレーベルの歴史研究

シネマジックは1983年に発足。サン出版でSM雑誌の編集者をしていた吉村彰一(2015年没)が社長となり立ち上げた。前年から活動を始めていたアートビデオと並ぶ、SM物のAVメーカーのパイオニアである。シネマジックのメインレーベルである「collect」について、同社営業部の白倉氏にお話を伺った。

第11回 collect「浣腸を控えたインモラル天使」


『S&M生撮り 悦縛!愛奴A』(画像提供:シネマジック)

第11回 collect「浣腸を控えたインモラル天使」

吉村は、出版社に勤める編集者だったが、大学時代に映研所属だった映画青年の志がやみがたく、1983年にシネマジックを旗揚げしたという。

「弊社は、吉村彰一がサン出版の編集者時代に担当していた作家の団鬼六(2011年没)さんの作品を映画にしたいとの思いから誕生したんです。その際に、映画に近い映像をということで、SM物のドラマ作品を作る会社となりました。社名は、映画の『シネマ』と、なにか思いもよらないものを生もうということで、魔術の『マジック』を合わせたものです」


「逃亡M奴隷捕獲拘禁アリ地獄 浜崎真緒」(放送:AV王)

業界の一方の雄・アートビデオがSMのプレイをドキュメンタリー仕立てで描くのに対し、シネマジック作品は物語があってのSMプレイにこだわる。初期の作品は、すべて吉村が演出していた。

「設立当時は社員が5人くらいだったと聞いています。営業部もなく、広報業務も撮影も社員全員が協力してやっていました」

その記念すべき第1作は、『S&M生撮り 悦縛!愛奴A』(1983年)。舞台は新宿歌舞伎町のラブホテル。監督は吉村彰一、男優は中野D児。巨乳のモデル嬢が主演で、カメラマンを含む計4名で撮り下ろした。当時はまだビデ倫(映像作品の審査団体=現在は解散)にも加盟しておらず、吉村はなんでもありの実験的な試みを続けていたという。スカパー!アダルトでは過去に春童監督のインタビューをしているが、彼が語る吉村の人物像は、「酒飲みでどうしようもない部分もあるが、わがままを言う代わりに他人の10倍努力する人」。エネルギッシュで魅力的な男だったことは間違いないだろう。


『D-CUP美少女 シスターL』(画像提供:シネマジック)

吉村と中野のコンビは、この後も名作を生み続けていくが、中でも、菊池えり主演の『D-CUP美少女 シスターL』(1985年、共同監督は中野D児)は、最高傑作との呼び声が高い。

菊池えりはあどけない顔だちと、日本人離れしたグラマラスな肉体でセンセーションを巻き起こしたAV女優だ。そんな彼女が、清楚なムードただよう聖職者に扮し、SMの過酷な攻めに陥落していく映像は、衝撃的だった。この頃にはビデ倫への加盟も果たしていた同社は一気に知名度を上げ、メジャーなAVメーカーの一社として飛躍を遂げた。

「菊池えりさんのおかげで今の自社ビルが建てられたといっても過言ではないですね。SMファンだけではなく、多くのAVファンの注目を集めましたから。中野D児さんはこの作品でも男優をやっているんですが、彼が菊池えりさんを吉村に紹介したと聞いています」


「逃亡M奴隷捕獲拘禁アリ地獄 浜崎真緒」(放送:AV王)

『シスターL』はシリーズ物となって計3作品がリリースされ、どれもよく売れた。

「最初はレンタル物として出したんですが、直販を希望する声がものすごく、その後、アダルトビデオを扱うショップで販売する廉価版の『メモリアルシリーズ』として、同じくVHSで出しました。さらに、DVDが流通し始めた頃にも、3作品を1枚にまとめて販売しています。根強い人気のあるタイトルだと思います」

だが、こうした旧作を復刻する際には、作品の審査基準の変化に注意が必要なのだという。昔はなにごとにもおおらかだったゆえセーフだったものが、十数年も経った後のコンプライアンス優先の風潮に照らしては、アウトになってしまうということだ。

「『シスターL』の場合ですと、シスターだから当然、教会が舞台ですよね。だから教会で撮影したんですが、DVDで販売するときに、教会の建物に設置されていた、とあるものにモザイクを乗せることになりました。他にも、パッケージ写真に映っているロウソクの火が人の肌と近すぎると指摘されたこともありますね。そういう場合は、火の部分にモザイクを乗せなくちゃいけない(笑)」


『インモラル女●生 島崎梨乃』(画像提供:シネマジック)

審査基準の変遷は、タイトルに使える文言にも表れている。例えば、『シスターL』と並んで、シネマジック初期の大ヒット作として知られる、『インモラル女●生』(1986年、伏字は編集部によるもの)。主演はアイドル系のルックスで人気を博していた島崎梨乃だ。

「女子●生物を演じることができて、なおかつ浣腸プレイもこなしてくれる女優さんは、当時はほとんどいませんでした。そんなところに弊社が巡り会ったのが島崎梨乃さんです。もう発売前から、この作品は売れるに決まっていると社内の誰もが確信していましたし、実際に売れました」

このシリーズは、順調に続編を重ねたが、途中でタイトル変更の憂き目に遭っているという。

「『インモラル女●生』というタイトルは、シリーズ3本目まで。そこまでは『女●生』という表記はビデ倫の基準でもOKだったんですが、その後『女■生』(同じく伏字は編集部によるもの)に書き変えるよう言われてしまい、その結果として『インモラル女■生』になったんです」


『インモラル天使 相原めぐみ』(画像提供:シネマジック)

そして、『インモラル女■生』のリリースと並行して、『インモラル天使 相原めぐみ』(1991年)が世に出た。通称「イモ天」として知られる、シネマジックの代表的シリーズが産声をあげたのである。同シリーズは2012年まで続き、通し番号がついているものだけでも52本、「インモラル天使+女優名」の形でリリースされたタイトルも数十本に達した。名のある女優たちを起用して売れ続け、シネマジック史に残る長寿シリーズとなった。

「『インモラル女■生』は、女子●生が浣腸されるというのが売りのひとつでしたが、『インモラル天使』では、浣腸をやっている作品は、シリーズの最後のほうの数本だけ。浣腸のシーンがなくても視聴者に満足してもらえるような、女子●生SM路線を目指していたということです。あんまりハードなプレイを要求すると、かわいい女優さんが出てくれないという事情もありましたからね」


『奴隷女教師 羞恥の放課後 麻宮淳子』(画像提供:シネマジック)

わかりやすいところを紹介すると、1995年にKUKIからデビューした美少女女優の三浦あいかは、『インモラル天使27』(1996年)でSMを解禁している。SM耐性のない美少女女優たちを口説きおとすため、同社はイモ天ではソフトなイメージ作りを心がけていたということだろう。

こうしたヒット作を含め、同社作品の大半は社名と同じ「CineMagic」レーベルで展開されていた。それが「collect」に変わったのは、『奴隷女教師 羞恥の放課後 麻宮淳子』(2000年)からだ。

「実を言うと、『CineMagic』レーベルからそのまま品番を受け継いでいますし、作品づくりのコンセプトも同じ。つまり、レーベルの名前だけ変えたんです。理由としては、縛りにこだわらないドキュメント路線のレーベル『ノワール』や、緊縛師でもあった雪村春樹監督(2016年没)とともに始まった緊縛メインのレーベル『縄(ジョウ)』など、すでにいくつものレーベルを展開している状況があったため。『シネマジック』を使うのは社名だけにして、これに代わる新しいレーベル名を設けようと判断したというわけです」


「浣腸ホテルゴモラ 超ド級150分SP」(放送:AV王)

こうして始まったレーベル名「collect」の由来は、「奴隷を『収集する』、『コレクションする』」という英語の意味そのままだ。『インモラル女■生』『インモラル天使』の他、『被虐の女戦士』『奴隷女教師』『奴隷秘書』などのシリーズ物が増えたうえに、各シリーズの本数も多くなっていたため、それらをひっくるめたレーベル名として、「collect」の名がふさわしいとの結論に至ったらしい。

では、その改名から20年が経った今、collectレーベルではどのような作品を世に出しているのか。今月はスカパー!アダルトでcollect作品が2本放送されるので、ぜひチェックしてみてほしい。まず、「浣腸ホテルゴモラ 超ド級150分SP」(AV王)から、白倉氏によるおすすめコメントをご紹介しよう。

「ホテル業界を舞台にした人気シリーズ『浣腸ホテルゴモラ』3作の総集編ですね。高級ホテル風の廊下と部屋があるスタジオに巡り会えたことで生まれたシリーズなんです」


「浣腸ホテルゴモラ 超ド級150分SP」(放送:AV王)

この『浣腸ホテルゴモラ』シリーズのハードぶりを説明するには、各作品の副題をお伝えするのが一番だろう。1作目の副題は『奴隷コックと夜の支配人』、2作目では『家畜ソムリエとアナル女帝』、3作目では『匂いフェチのゲストとパフューム女王』だ。

「シェフやコックやソムリエなどのホテルスタッフや、ホテル業界を牛耳る女帝、そして変態常連客が登場して、プレイします。美食のおもてなしからの浣腸プレイが見どころですね」

そしてもう1つは、「逃亡M奴隷捕獲拘禁アリ地獄 浜崎真緒」(AV王)。押しも押されもせぬトップクラスの人気を誇る浜崎真緒の、シネマジック初出演作だ。

「女子●生役の浜崎真緒ちゃんは、母親の再婚相手に調教され、耐えきれずに逃亡するのですが、その後、さらなる調教マニアの手に落ちて攻められてしまいます。ボールギャグを噛まされ、乳首をクリップで引っ張られたり、縄でギッチリ拘束された状態でのロウソク攻めや、激痛ムチでの号泣など、ハードなプレイをやってくれた作品です」


「浣腸ホテルゴモラ 超ド級150分SP」(放送:AV王)

タフな肉体と強気なハートで知られる浜崎真緒を号泣させるとは、さすが本気のSMメーカーの攻めである。だがこれでは、SM未経験の女優はもちろんのこと、他メーカーのSM作品に出ている女優ですらシネマジックからのオファーを敬遠してしまうのではないか。

「キャスティングに関しては、旬な女優さんを起用しようとすると、難航することがありますね。他のメーカーさんによる拘束がある女優さんも多いですし。その拘束が解けるのをじっと待って、打診することがあるんですが、やんわり断られることが何回もありますね」

しかも、そうした苦労を乗り越えてSM経験の浅い人気女優の出演を取りつけたとしても、セールス面では必ずしも好成績には結びつかないらしい。

「人気女優がウチに初出演したからといって、必ず売れるというわけではないんですよね。その女の子を追いかけていたファンが、必ずしも弊社の作品を見るわけではないので。アイドル系の女優が好きでも、その子がSMをやっているのを見るのは苦手だというユーザーがいるんですよ」


『奴隷市場の女 川上ゆう』(画像提供:シネマジック)

同社はこれまでに、菊池えりから始まって多数のヒット作を出しているが、どういった女優が売れ線なのか。おぼこいタイプ、クールな美女、巨乳、痴女系など、個性豊かな女優たちがシネマジック作品に出演しているが、特に売れるタイプというのはあるのだろうか。

「特にキャラクターでそういう売れる売れないが左右されることはないんですが、SMの経験がない若くてかわいらしい女の子よりも、他社でいろんなスキルを発揮している女優さんのほうが売れますね。特にパッと浮かぶのは、やはり川上ゆうさん。彼女が美少女路線の森野雫から川上ゆうに改名した初めての作品が、弊社の『奴隷市場の女』(2007年)でして、よく売れたことも含めてご縁の深い女優さんです。他には、風間ゆみさんでしょうか。ルックスや年齢よりも、プレイをしっかりこなしてくれる女優さんが支持されています」


「浣腸ホテルゴモラ 超ド級150分SP」(放送:AV王)

SM作品とは、地道に努力する者が、報われる世界ということなのかもしれない。AV業界で長く女優人生を続けたいと考えている者にとっては、心強い話だ。最後に、シネマジックは、メーカーとして今後どういった展望を描いているのか、聞いてみた。

「弊社はわが道を行き続けるとしか言いようがないですね。他社でこれが売れたからウチでも作ってみようということはやらないですから。そうした作品づくりを進めるなかで、やはりシネマジックの顔となるのはcollectレーベルです。まず女優さんがいて、そして台本があるストーリー物という部分は変わることはないです。吉村彰一が始めた1983年からの弊社の根幹ですからね」

団鬼六のSM小説を映画化しようとシネマジックを作った吉村彰一は、2000年に団鬼六原作の『不貞の季節』を廣木隆一監督、大杉漣主演で製作。2003年には団鬼六の『外道の群れ』を原作とする『およう』を関本郁夫監督、熊川哲也、竹中直人主演で主導製作を果たした。吉村の情熱と魂は、今もシネマジックに生き続けている。

Profile

Profile

文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

放送情報

今月の「collect」番組はコチラ!


スカパーアダルト番組検索

ご契約はこちらから

ご契約はこちらから WEBなら24時間受け付け

テレビでみるなら

WEBでのご加入はこちら

スマホ・PC・タブレットでみるなら

スカパー!アダルトオンデマンド 詳しくはこちら

閉じる