アダルトレーベルの歴史研究

誕生からほぼ40年を刻むAVの歴史は、そのままh.m.pの歴史に重なる。その発祥は1981年までさかのぼり、業界の最古参メーカーの一つとして、同社は幾多の名作や名女優を世に送り続けてきた。「処女宮」や「官能姫」などの金字塔シリーズや、白石ひとみ、小室友里、明日花キララといったレジェンドは、AVファンなら誰しも知るところだろう。今月は、名門老舗メーカーが歩んできた足跡を追いながら、同社の社名が冠された中核レーベル「h.m.p」をご紹介していきたい。

第5回 h.m.p「ブランドの危機に何をすべきか」


「処女宮 天使の濡れた丘 星野ひかる」(画像提供:h.m.p)

第5回 h.m.p「ブランドの危機に何をすべきか」

日本のAV第1号である『OLワレメ白書・熟した秘園』『ビニ本の女・秘奥覗き』が販売されたのが1981年のこと。この年、SM界の巨頭・賀山茂も、六本木で主宰していた会員制SMクラブ「SAMM」を母体とする「サム・ビデオ・センター」を発足させた。

以来、精力的に本格SM作品をリリースしていた賀山は、さらに幅広くエロ映像商戦に参戦すべく、1984年に芳友舎(「芳」の字は賀山の本名にちなむ)を設立。「SAMM」は同社のメインレーベルとなり、路線もSMから一般的なジャンルのエロへとシフトするなかで、豊田薫監督が始めた『口全ワイセツ』(フェラチオを売りにした、当時の常識を超える過激な描写のシリーズ)などが大ヒットし、一気に知名度を獲得した。やがて専属女優を抱える単体女優メーカーとしてトップまで駆け上がった同社は、芳友メディアプロデュース、そしてエイチエムピィと社名を変え、2004年にh.m.pとなって現在に至っている。


「官能姫 白石ひとみ」(画像提供:h.m.p)

今回取材に答えてくれたh.m.p社長・菊間氏は、もとはレンタルビデオ店に向けて作品を販売する問屋の営業マン。エイチエムピィ時代に入社し、社歴は20年になる。

「私がいた問屋は、いろいろなメーカーの作品を扱っていましたが、その頃の芳友舎といえば単体女優の会社として強い存在感がありましたね。その後、エイチエムピィに社名変更してからは、総合デパート的なメーカーというイメージですね。単体女優物のみならず、企画物も売れていました」


「処女宮 メモリアル 長谷川瞳」(画像提供:h.m.p)

AV黎明期に発足した芳友舎には、豊田薫監督、神野龍太郎、島村雪彦といった気鋭の個性派監督が集い、同社はその勢いのまま90年代のAV黄金期へと突き進んでいった。

「出せばなんでも売れていた90年代は、作り手の力が強く出ていました。監督イコール、レーベルになっていたほどです(以下、カッコ内の数字は発足した年度)。カンパニー松尾監督はDOKAN(1995年)、バクシーシ山下監督はDOCUMENT (1996年)というように、1監督につき1レーベルで、監督のやりたいものを撮ってもらっていた時代ですね。女優を前面に出すよりも、監督たちが自分のカラーを出した作品、つまり『監督力』をアピールしたAVを売っていたんです」


「こんなAIKAが見たかった!いちゃラブ中●し同棲生活」(放送:プレイボーイ チャンネル)

売れずにすぐに消滅したレーベルも数えきれないほどあったが、レンタルショップの限られた棚を奪い合うため、監督の名前に頼った時代があったのである。

だが、そうしたクリエイター優位の制作環境は徐々に変化していく。AV作品が大量に流通するなかで、AVユーザーは好みの女優が出演している作品に絞って見ることになる。AVなら何でも売れる時代は過ぎ去り、監督のこだわりを前面に出した映像世界は、淘汰されていった。

「2000年初頭から、ウチの社内は営業部の力が強くなってきました。売り上げありきでないと会社が成り立たないですからね。この時期、ショップにAVを売ってくれる代理店である問屋に作品を買い取ってもらうため、重宝していたのが、新人女優です。『こんなかわいい新人がデビューします』と問屋さんにアピールし、その女優とセットの新レーベルを発足させ、同時にお客さんを巻き込むイベントも興していました。レーベル名を選んでもらったり、ロゴを投票してもらって決めるようにもなりました。競合する単体女優メーカーに負けないためには、必要だったんです」


「セクハラ☆スポーツ☆パフェ 明日花キララ」(放送:エンタ!959)

とはいえ、1990年代から2000年代初頭までは、現在のようにセルビデオのショップで女優のファンを集めたイベントは一般的ではなかった。現在のセル店は販売委託方式であり、エンドユーザーが買ってくれてはじめてメーカーの売上が立つのに対して、かつてのレンタルビデオは、返品なしの売り切り方式。AVメーカーのメインの顧客は問屋であり、その先のレンタルショップだったのだ。

「専属女優の名刺も作って、デビューする際に営業担当者と一緒に全国を行脚してました。そこで問屋やショップの関係者を相手にサイン会をやって女優の名刺を渡すんです。問屋さんの担当者に女優を紹介して、『ツーショットも撮りますか?』とお誘いしたり、現在ユーザーさんを相手にやっているようなことをやっていましたね。その結果、たとえばその県内に30店舗を抱えている担当さんが、『かわいい新人さんですね。ウチの取引先の各店舗に10本ずつ入れますよ』なんて言ってくれたら万々歳ですよ」


「処女宮 ~natural~ 神谷まゆ」(画像提供:h.m.p)

全国各地にいくつもの問屋があり、同社の営業先は、大阪でも福岡でも100はくだらなかったという。現在と違ってAV女優によるSNSもブログもない時代だ。菊間氏が全国を回っていた頃の女優は、業界について何の情報もなく、不安を抱きながらAV界に飛び込んできていた。メーカー担当者との距離は自然と近くなる。

「みんな純朴なんですよ。移動の新幹線の中で『私、本当に売れるんでしょうか?』って心配している。私たちは専属女優たちのいろんな私生活の相談にも乗ったし、愚痴も聞いたし、お父さん的な存在でもありました。新大阪から東京へ帰る車内で、ずっと『一緒に頑張ろうな』って言い続けてモチベーションを上げたりね」

今も現役を続けている女優では、明日花キララ(2007年12月デビュー)、秋山祥子(2009年10月)がh.m.p専属女優としてキャリアをスタートさせている。当時、専属単体女優のメーカーとして、業界におけるh.m.pの存在感は巨大であり、各モデルプロダクションのマネージャーは、イチ推しの女の子をh.m.pに売り込むのに必死だった。


佐倉ねね 終わらないM男いじめ」(放送:プレイボーイ チャンネル)

同社の歴代専属女優は、キラ星のごとく。彼女たちのデビュー作としては、『処女宮』シリーズが有名だ。葉山レイコ(1986年)に始まる、とびきりの輝きをもって業界入りした新人が抜擢される『処女宮』の出身者は、星野ひかる(1990年6月)、浅倉舞(1992年3月)、夕樹舞子(1995年4月)、長谷川瞳(2001年7月)、神谷まゆ(2012年7月)など、AV史に名を刻むスター女優がズラリ。また、白石ひとみ(1990年9月)、小室友里(1996年1月)といったスター女優が専属としてのデビューを飾った『官能姫』も、同社の看板シリーズとして名高い。

「『処女宮』は、キャスティング担当だけでなく、ウチのオーナーから営業、制作、すべての部署の全員が一致してOKを出した女の子でないと撮りませんでした。そのくらいに会社として大切にしていたシリーズです」

だが、歌舞伎でいうところの大名跡も、時代の波に押されている。30〜40代の年齢層ともなると、ユーザーはもちろんショップの店長クラスですら、「『処女宮』って何ですか?」とキョトンとする人が増えていると、菊間氏は言う。

ブランドの危機である。


「新人・有村千佳 大槻ひびき 初美沙希 デビュー」(放送:レインボーチャンネル)

これを同社はどう乗り越えていくのか。2016年11月にキカタンの女王・初美沙希が、h.m.p専属女優になるにあたっての第一弾として「処女宮」に出演しているが、これは彼女のAVデビュー作ではない。h.m.p専属女優のAVデビュー作としては、2014年3月の浅倉愛以降、「処女宮」はリリースされていないし、そもそも近年の同社は、専属女優のデビュー作品すら扱っていない。

「まず、専属女優からお話ししましょう。h.m.pからデビューした女の子は今年もいるんです。ただし1本きりで、メーカーとしては拘束していません」

実績のない新人女優と複数本の専属契約をするというやり方は、やはり昔も今もリスクが伴う。だがそれ以上の理由として菊間氏が挙げるのは、企画単体女優のレベルの底上げである。企画単体の売れっ子が花盛りの現在、メーカーの専属女優より数字を出す女の子がざらにいる。

「時代の流れですね。昔と違って、専属女優と企画単体女優の差はなくなっています。スター性も人気も。となると専属にこだわらず、旬な女優さんに出てもらうほうが、メーカーにとって営業面でのメリットが大きいんですよ


『霧島さくら』姉ちゃんと中●ししない!? 彼女の姉のハニートラップSEXで寝取られた僕!」 「彼女の姉貴とイケナイ中●し関係!霧島さくら」(放送:レインボーチャンネル)

老舗ゆえの専属女優へのこだわりは、ながらく同社を縛ってきたが、マーケットには従わざるを得ないということらしい。

「昔の私たちは、絶対に専属女優を『処女宮』『官能姫』『口全ワイセツ』に出演させるんだ、って燃え上がっている部分がありました。でも、女優さんを無理やりそこに当てはめてもいい結果が出ないことを、身をもって知らされたんです。今は、女優に合った企画のAVを作ることが大切な時代なんだと思います」

ある時期の『処女宮』には、その看板に本来そぐわないタイプの女優も出演しているし、豊田薫監督が他社に移籍して以降の『口全ワイセツ』は、別の監督が撮っている。これらには確かに賛否両論があった。

「それは私たちも理解しています。短期的な売り上げのためでしたが、ああいうことをやっていると、初期からのファンが『昔はこうじゃなかったのに……』と嘆いて離れていくんですよ。今はその反省があって、〝企画ありき〟だったり、〝リリースありき〟ではなく、どんぴしゃハマる女優さんがいた場合だけ作る方針です。ただ、専属というこだわりを捨てただけで、h.m.pは各モデルプロダクションに『専属をやめました』とは一言も言ってません。今後も逸材と出会えたら専属デビューの可能性はあります」


「笹倉家のしきたり 受精専用中●しメイド 笹倉杏」 「性奴●として従順に主人の性処理に従うメイドの杏!その笑顔の裏側は、復讐心の塊だった!」(放送:レインボーチャンネル)

実際、同社は今も専属女優を抱えている。昨今リリースしている作品は、主に人気の企画単体女優を起用しているが、その中でも売れっ子である霧島さくらに白羽の矢を立てた形だ。

「霧島さくらさんは、もともとウチの作品によく出てくれていたし、AVに対するモチベーションも高かったし、人気もあって作品も売れていました。そしてなにより決定的だったのが、2017年11月のジャパンアダルトエキスポですね。ウチのブースに立った霧島さんは、お客さんとのコミュニケーションが抜群にうまかったんですよ。今の女優さんには、撮影だけじゃなく、発売後もイベント込みのグロスとして売り上げを出して欲しいのがメーカーの本音。その点、霧島さんは最も適任だと判断して、専属になってもらいました」


「笹倉杏 快楽堕ち 固定肉便器」(放送:プレイボーイ チャンネル)

また、専属女優と並ぶメーカーの顔として、h.m.pには「宣伝部」の肩書を持った企画単体女優がいる。過去には初美沙希、月本愛が務めており、2018年2月以降は、笹倉杏が担当している。

「SNSやイベントを通じてh.m.pというブランドをAVファンに広めるべく始めたんです。ちゃんとわれわれメーカーや、ショップの人、ユーザーとコミュニケーションをとれて、他の女優さんが出ているh.m.p作品も気持ちよく宣伝してくれる女優さんを選んで、やってもらっています」

メーカーとの接触頻度が他の女優と比べて多くなるため、制作側としても、彼女のキャラクターに合わせた作品を構想しやすい。今月のレインボーチャンネルで放送される「笹倉家のしきたり 受精専用中●しメイド 笹倉杏」はその好例だろう。自分を捨てた父親に復讐するため性奴隷メイドの境遇に甘んじる娘を、クールかつ淫乱に笹倉杏が演じている。


「完全主観 濃密スイートルーム[外資系企業OL] 滝川穂乃果」(画像提供:h.m.p)

この笹倉作品は、「三田家のしきたり 受精専用 中●しメイド 三田杏」(2018年9月発売)に続く連作だが、 他にも菊間氏イチオシの要注目シリーズがある。

「今年4月のリリース分から始まった『濃密スイートルーム』は良いですよ。男性の完全主観でハメ撮りが展開される、男の妄想劇場です。同僚の美人OLがつきあってくれて一緒にラブホテルに入り、変態的なプレイを受け入れてくれるという展開が売りです。『初撮り中●しアルバイト』も今年3月から始めました。うぶな素●の女の子を激しく攻めて淫乱な姿をさらさせるというのが売りです。ぜひご覧いただきたいと思います」


「初撮り中●しアルバイト 趣味がAV鑑賞の変態デカ尻パイパン美女 有村さおり」 「『初撮り』本能の赴くままの中●し快楽セックスで自ら腰を振りザーメンをオマ●コで吸い尽くす!」(放送:レインボーチャンネル)

ちなみに、歴史あるh.m.pゆえに、メーカーの公式サイトではオールドファンに向け、「受注販売」もおこなっている。ファンが希望する昔の作品を、DVDにプレスして売ってもらえるのだ。メーカー担当者ですら、「こんな子、いたんだ?」と注文を受けて初めて知ることも多いという。こうした過去の蓄積を大切にしつつも、変化を恐れない商品展開で老舗の暖簾を守っていこうと、菊間氏は考えている。

「今後も、時代の動向に合わせて企画や作品内容を変化させていくつもりです。『ウチの売りは昔からこうだから変えない』というかたくなな部分はなくします。缶コーヒーも甘いのが主流だと思っていたら、次は無糖が人気になったように、お客さんの好みには波があります。老舗の和菓子店なども頑固に昔からの味を守っているようでいながら、実はその時代のニーズに合わせて、味付けをちょっとずつ変えていますよね。そういう変化に対応できるところこそが、長く商売をやっている組織の強みなんだと思います」

老舗にふさわしい今後の展望を頂戴しました。筆者が童貞時代からともに過ごしたSAMMに始まるh.m.pだもの、宣伝部員は無理ですが、いつだって気持ちは応援部員ですからね!

Profile

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文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

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