アダルトレーベルの歴史研究

AV業界では、幾多のクリエイターたちが、世間の度肝を抜く衝撃的映像を世に出してきた。40年に渡るその挑戦の歴史を先頭で引っ張っていたのが代々木忠監督であり、彼が設立したAVメーカー・アテナ映像は、業界のパイオニア的存在だ。1981年12月の発足以来、ただひとつ「ATHENA」のレーベル名で作品をリリースし続けている同社を訪ねた。

第9回 ATHENA「愛情や嫉妬の先に人生が見える」


『愛染恭子の本●生撮り 淫欲のうずき(※伏せ字は編集部によるもの)』(画像提供:アテナ映像)

第9回 ATHENA「愛情や嫉妬の先に人生が見える」

取材班を迎えてくれたのは、現在の同社社長を務める杉山英寛氏。まずは、アテナ映像の第一作から話を聞いた。

「AV黎明期の伝説の女優・愛染恭子の『本●生撮りシリーズ(※伏せ字は編集部によるもの)』が1981年に始まりました。そのうちの『Part1 淫欲のうずき』が当社の記念すべき第一作です。これは万単位の本数を出荷する大ヒットになり、翌1982年には映画館でも上映されるほどの人気となりました。ビデオ映像をフィルムに変換する「キネコ」と呼ばれる装置を経ての劇場公開は、この作品が本邦初です」

こうして代々木忠監督はたちまちヒットメーカーとなり、その名を世間にとどろかせたのだ。

ここで、AV史に詳しいオールドファンには疑問が浮かぶかもしれない。『淫欲のうずき』の商品パッケージにクレジットされているのは、「企画・製作 アクトレスプロダクション」であり、アテナ映像の名は出てこないからだ。しかしそれでいて、アテナ映像おなじみのシンボルマークは使われている。


現在も使われるアテナのマーク:『ザ・面接2018代々木忠』DVDパッケージ背表紙より(画像提供:アテナ映像)

「アテナ映像の前身は、代々木監督が経営していた『アクトレス』という芸能モデルプロダクションです。アテナ映像のマークは、アクトレスの時代から現在まで変わっていません。芸大の教授に代々木監督がお願いして作ってもらったもので、アクトレス=女優の顔をイメージしています。女優の髪の毛の部分が、アルファベットのaをかたどったデザインになっているんです」

プロダクション経営を経て愛染恭子を撮ることになる経緯については、代々木監督のインタビュー記事に詳しい。その後、アダルトビデオの制作・販売に本格的に乗り出すこととなり、同社は「アテナ映像」へ改名したという。

「これも代々木監督が考案したんです。ギリシャ神話の女神であるアテナ(Athena)の名を、そのまま社名にしました。アテナは、知恵、芸術、戦略などを司る女神ということで、これがいいと」


『ドキュメント ザ・オナニー Part1 主婦・斉藤京子(25才)』(画像提供:アテナ映像)

アテナは海神ポセイドンや軍神アレスとの衝突をはじめ、多くの戦いに臨んでいるが、知恵と戦略をもっていずれも勝ちを収めている。そんな女神にあやかった同社も、快進撃を続けた。

「1982年、『女性がオナニーしている姿ほどいやらしいものはない』と代々木監督が撮り上げた『ドキュメント・ザ・オナニー』シリーズがさらなるヒットとなりました。女性がオナニーで本当にイク姿というのを、日本の男性はここで初めて見たんですよね」

『ザ・オナニー』も劇場版が公開され、ロングラン上映された。

「続く1983年の『性感極秘テクニック』も劇場公開されました。まだビデオデッキが30万円くらいの高級品だったため家庭に普及していないということもあって、“生撮り”の本当のSEXやオナニーを映画館で見られるんだ、とお客さんが大挙押しかけました。あの時期は、フィルム撮りのポルノ映画も上映されていましたが、あちらは女優が前貼りをアソコに貼っての擬似SEXで、客の入りは7割ほど。当社のキネコ作品は立ち見が出るほどで、興行的に圧倒していましたよ」


『いんらんパフォーマンス 特別版 密教昇天の極意』(画像提供:アテナ映像)

初期のアテナ映像の作品は、すなわち代々木忠ワールドである。性の深淵を探るべく、アダルトビデオという装置を利用して代々木監督は冒険の旅に出た。

「代々木監督の作品は、猥褻を表現しつつも、男優と女優のカラミを撮る一般的なAVではなかった。代々木監督は以降40年間、映像を通して、愛情や嫉妬、ひいては人生とは何かという部分まですくい取り、それをユーザーに提供しているんです」

そうした手探りのなかで、『サイコ催眠エクスタシー』(1985年~)、『いんらんパフォーマンス』(1987年~)、『チャネリングFUCK』(1990年~)、『素●発情地帯(※伏せ字は編集部によるもの)』(1991年~)など、多くの野心作が発売され、シリーズ化された。


「ザ・面接 4時間ウルトラDX 代々木忠2018 ~そのとき我慢できなくなった人妻エキストラは…~」(放送:AV王)

とりわけ、『いんらんパフォーマンス 特別版 密教昇天の極意』(1990年)では男のオーガズムにスポットを当て、加藤鷹がイッて失神している姿が映っているというから興味深い。他にも、まだ男が女をヨガらせるのが一般的だった時代、SEXYエステティシャンとして有名だった南智子がそのテクニックを披露して男をヨガらせる『性感Xテクニック』(1991年~)シリーズもインパクト大だったし、『平成淫女隊』(1994年~)シリーズも同様だ。

「人間の素のままのSEXを撮りたいという気持ちがずっと一貫してあって、だから代々木監督は、素●の女性たちによる『ザ・面接』(1993年~)シリーズを今もみずからのカメラで撮り続けているというわけです」

だからといって、他のメーカーを意識して、一線を画すとか差別化を図るという意識は代々木監督にも杉山氏にもないのだという。作り手が純粋に追求したいものを撮影し続けた結果が、アテナ映像作品のカラーとなっていったのだ。


『あなたとしたい 菊池エリ』(画像提供:アテナ映像)

「AD(助監督)として入社した鬼闘光がアテナ映像の2人目の監督に昇進する際にも、撮り方についての縛りはナシ。代々木監督は鬼闘監督に、『君のエロへのこだわりをそのまま撮ればいい』というようなことだけを言ったんです」

鬼闘監督のデビュー作品であり、アテナ映像のパイオニアぶりを端的に物語るのが、1986年に始まった『あなたとしたい』シリーズだ。

「完全一人称物の走りでした。鬼闘監督が、『見てる人がAV女優とエッチしてる気分に浸れるものを撮りたい』と始めたんです」

今では多くのAVメーカーがリリースしている、ユーザー目線=主観の同棲物などの元祖こそ、この『あなたとしたい』だった。シリーズ1作目の菊池エリをはじめ、1980年代にデビューした斉藤唯、日向まこ、小沢奈美ら、AV史に名を残す人気女優が出演して注目を浴びた。


「ザ・カメラテスト~とても感じやすい素●女性を面接で無理やり…50人5時間~復刻2号」(放送:AV王)

このシリーズの成功で名を上げた鬼闘監督が、1998年に満を持して始めたのが、『ザ・カメラテスト』。この作品も人気を博し、代々木監督の『ザ・面接』と並ぶアテナ映像の看板シリーズに成長した。

「素●の女性がAV出演に向けてカメラテストを受けにやってくる。そこで、『何なら今からでも撮影してもいいよ?』とエロい気分をあおる。女の子は鬼闘監督の穏やかな物腰に安心しつつ、カメラ前で興奮してSEXまでヤッてしまうんですね。この生々しい展開に加えて、巨乳好きの鬼闘監督ゆえのおっぱいへのこだわりが映像にあふれているのが、ヒットの理由かと思います。素●物好き、および巨乳好きのユーザーに支持され続けました」

また、素●女性を起用した企画作品だけでなく、名のあるAV女優たちもアテナ映像を彩った。

「女優物のシリーズで言うと、鬼闘監督による人気女優2人を起用した『ロマンコレクション』(1986年)、代々木監督による人気女優4人が出演する『セクシー4 』(1985年~)が売れましたね」


『セクシーメイツ』(画像提供:アテナ映像)

ドラマあり、コントあり、素のままのエッチありという、「マガジンビデオ」とも呼ばれたバラエティAVの元祖といえるのがこの2タイトルだ。そして、『セクシー4 』がパワーアップしたのが、1985年に始まった『セクシーメイツ』シリーズ。旬な女優4人が起用され、ドラマからエッチなゲームコーナーまで入った、バブル期ならではの豪華な大作。代々木監督と外注の監督陣がコーナーごとに演出を担当し、サイパンへの海外ロケもおこなわれた。いまでは恵比寿マスカッツなど、複数のAV女優によるアイドルユニットは花盛りだが、さかのぼればアテナ映像の「セクシーメイツ」にたどり着くというわけだ。

「とはいえ、アテナ映像は、代々木、鬼闘の2監督だけではありませんよ。この2人の他にも、熱いこだわりを持った外注監督も起用するようになり、彼らもヒットシリーズを作ってくれたんです。たとえば大沼栄太郎監督の『おはズボッ!』(2001年~)。これは、故・鬼沢修二監督による『即尺即ズボッ!』(1997年~)というシリーズをさらに発展させたもので、素●の女性から企画単体の女優までが登場。朝、AV撮影のため現場にやってきて、いきなり現れた男優とSEXをするハメになり、思いもよらない興奮を覚えて濡らしてしまう……という作品です」


『おはズボッ!』(画像提供:アテナ映像)

出会ってすぐにハメるというコンセプトの作品は、人気ジャンルとして定着しているが、その先陣を切ったのが、この大沼監督のものということになる。

「女性は家から来て、まだメイクもしてないし、シャワーも浴びていない。パンツの中にはオリモノシートが入ったままの女性もいる。つまり、本名の普通の女の子から、芸名のAV女優に気持ちが切り替わる前に、SEXに突入するんですから、女の子も興奮するんですよ。いつものAV現場でやっているような、当たり前のカラミじゃないから、男優もよけいに興奮していましたね」

次いで挙がったのは、『ザ・面接』の面接軍団=男優陣の隊長でもある市原克也監督による『全国のエロ奥さん、アソコ洗おて待っとけや』(2002年~)。

「これもウチの看板シリーズのひとつになりました。出演を志願する地方在住の人妻たちのもとへ、市原監督が男優を連れて出向いてSEXをしてもらい、撮影するんです。関西弁でのしゃべりが達者な市原監督にあおられた結果、彼女たちが隠していたエロい素顔をさらしてエクスタシーをあじわうというものですね」


『全国のエロ奥さん、アソコ洗おて待っとけや』(画像提供:アテナ映像)

だが、これだけ女性の素のエロスにこだわり続けたアテナ映像も、多くのAVメーカーがそうであるように、時代に応じた変化を余儀なくされる。

「代々木監督作品『女が淫らになるテープ』『ようこそ催淫(アブナイ)世界へ』シリーズは、撮影が2015年でストップしています」

『女が淫らになるテープ』とは、代々木監督が2002年から撮り始めたシリーズ。何かしら性に悩みを持つ女性が、ヘッドフォンでそのテープを聴くと、徐々に股間が火照ってくる。やがて、自身が思いもよらなかった痴態をさらしてしまうという生々しいドキュメントだ。


『女が淫らになるテープ』(画像提供:アテナ映像)

「そういう、人知れず深刻な欲求不満を抱いている女性が少なくなってきて、キャスティングが難しくなってきたためです。インターネットで刺激的な情報も生々しい映像も手に入る時代ですからね。性にオープンで、何でもヤリたいという積極的な女性が増えてきたんです」

まだ見ぬ世界に飛び込んだ女性の不安と恥じらい、といったものが撮りづらくなったのだ。

「市原監督の『全国のエロ奥さん、アソコ洗おて待っとけや』が休止になっているのもそのためです。AVに出ることに後ろめたさみたいなものがある、でも興味がある、みたいな女性が応募してこなくなった。昔はレディースコミックに募集広告を出していて、それを見た女性が応募してきたんですけど、そうした雑誌はいまではなくなってしまいました。代わりにネットで何でも見られるようになったので、そこでいろんなツールを使って欲望を満たせるようになったんでしょうね」

たしかに、近年の「人妻のAVデビュー作」を見ると、彼女たちはスマホでAVをよく見て知っているため、実に明朗であっけらかんとカメラ前でカラミをおこなう。


『昭和猥褻官能ドラマ』(画像提供:アテナ映像)

「素●の女性をキャスティングする際の面接は僕が担当しているんですけど、最近の出演動機のひとつが、好きな男優さんの名を挙げて、彼とヤッてみたいというもの。何本もAVを見て男優をアイドル視してる女性が現れ始めた。だから代々木監督が唯一撮り続けている『ザ・面接』も、内容が変わり続けているわけです」

そんななか、アテナ映像のラインナップに、2018年から『昭和猥褻官能ドラマ』シリーズが新たに加わった。令和の新時代になって、ますますオールドファンから支持される「昭和のエロス」の波に、アテナ映像も乗ったのだ。監督は、Zaptvで今月放送される「六十路熟女の家政婦は見た!近●相姦で乱れる秘密の情事を…」など、企画物からドラマ物まで幅広く手掛けてきた外注のベテラン・村山恭助。

「AVユーザーの主力層が、AV創生期から見つづけてきた50代、60代になったことが大きいですね。ビデオショップの営業の担当者から聞いた話ですが、昭和の頃に青春時代を過ごしていた彼らは、当時に目にしていたような民家を舞台にしたもののほうが、エロさをより感じるというんですよね。服装も安っぽいもので、物語も内容も、家が貧乏だったり、悲しい女性が主人公というのがグッとくるようです」


「六十路熟女の家政婦は見た!近●相姦で乱れる秘密の情事を…」(放送:Zaptv)

これだけ作品ジャンルが多岐に渡っているアテナ映像だが、すべての作品が「ATHENA」レーベルひとつだけで展開されている。多くの競合AVメーカーは、単体女優物、企画物などジャンルに応じた複数のレーベルを擁しているのと対照的だ。

「レーベル分けに意味はないと思っているからです。素●物であろうと、企画単体の女優物であろうと、アテナ映像作品というその看板だけでいいじゃないかと思っているので。代々木監督以下、『ATHENA』の名に愛着があって、こだわっているということでもあります」

唯一のレーベル名へのこだわりが、アテナ映像の作品づくりの土台になっているのだろう。

「代々木監督の『ドキュメント ザ・オナニー Part1 主婦・斉藤京子(25才)』がアテナ映像の原点。今後も、女の子の素の恥じらいから性欲までを表現していきたい。それを粛々と続けていこうと思っています」

アテナ映像が切り開くAVの未来に、期待したい。

Profile

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文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

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