せきしろのアダルトのある風景

あの頃、僕らのまわりには「アダルトのある風景」があったーー。 まぶしくて、恥ずかしくて、手の届かなかった、アレ。 文筆家のせきしろ氏が描く、アダルトにまつわる物語。

第9回「性の目覚め」

 私を構成しているもののひとつに「エロ」がある。その「エロ」というカテゴリーを作り上げた作品はいくつもある。

 ではそのカテゴリーが誕生したきっかけは何だったのか、つまりは性の目覚めとなったものは何だったのかを考え記憶を紐解くと、思い浮かぶ作品がふたつある。それはどちらも漫画であり、ひとつは『おじゃまユーレイくん』という作品であり、もうひとつは『胸さわぎの放課後』という作品だ。どちらの漫画が性を目覚めさせたのか定かではなく、自分の中では同時期くらいだと思っていたのだが、今回の執筆を機に調べてみると、『おじゃまユーレイくん』の連載開始が1979年であり『胸さわぎの放課後』は1981年であった。つまり私は『おじゃまユーレイくん』で目覚め、同時にカテゴリーが誕生したのだ。

 『おじゃまユーレイくん』はコロコロコミックで連載されていた漫画で、私は当時毎月コロコロコミックが発売されるのを楽しみにしていたから、リアルタイムで読んでいたことになる。

 主人公が事故で死んでしまって幽霊になり、その立場を利用して色々とエロいことをするという内容であるのだが、その中にニセ医者が学校の健康診断に来て女子の体を触りまくるという話があって、それを読んだ私はニセ医者が羨ましくなり、医者になれば誰にも怒られることなく、また周りに「エロい」と言われることなく、合法的に(もちろん当時は合法的という言葉は知らなかったが)体を触りまくれるんだと思い、頑張って勉強して医者になると決意した。

 もうひとつの『胸さわぎの放課後』は『週刊少年マガジン』で連載されていたラブコメ漫画で、この頃の私は『週刊少年マガジン』を読んでいなかったから単行本で読んだのが最初になる。たしか町の大きめの書店で立ち読みしたのが最初だ。ページをめくると女子更衣室のシーンから始まって一コマ目が胸のアップであったものだから、周りを気にしながら読みすすめた。さすがに買うことはできなかった。

 こちらは恋愛要素も多かったので、主人公の一平とヒロインの知佳の恋の行方にもドキドキしたもので、中学生になったらこういう恋愛があるのだろうと寝る前に二段ベッドの上で考えたりもした。

 あれから40年以上過ぎ、結局私は医者になることもなく、漫画のような恋愛をすることもなかった。

 そういえばどちらの漫画にも更衣室で女子がお互いに胸のことを話したり、時には触ったりするシーンがあった。他の漫画でもよく出てくる描写であったから、私はずっと女子更衣室ではそういうことが行われているんだと信じていた。しかしそういうものではないと年下の女性に言われて現実を知った。それはほんの1ヶ月前くらいの話だ。

Profile

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せきしろ

せきしろ

1970年北海道生まれ。文筆家。 著書に『去年ルノアールで』(マガジンハウス)、『不戦勝』(マガジンハウス)、『妄想道』(KADOKAWA)、『逡巡』(新潮社)、『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』(エンターブレイン)、『たとえる技術』(文響社)、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(双葉社)など。又吉直樹氏との共著の自由律俳句集に『カキフライが無いなら来なかった』(幻冬舎)、『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著に『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)がある。 2015年刊行の『海辺の週刊大衆』(双葉社)は又吉氏主演で映画化され、話題となった。最新作は『バスは北を進む』(幻冬舎文庫)。
Twitter:@sekishiro

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