せきしろのアダルトのある風景

あの頃、僕らのまわりには「アダルトのある風景」があったーー。 まぶしくて、恥ずかしくて、手の届かなかった、アレ。 文筆家のせきしろ氏が描く、アダルトにまつわる物語。

第10回「人を動かす力」

 エロ業界は絶えず何かを発明している。AVでも漫画でも雑誌でも、新しい何かを生み出している。

 エロというと1から2を作ること、たとえばパロディに長けているところが目立ちがちである。しかし実は0から1を作ることも多い。例を挙げるときりがないので割愛するが、現在のAVではポピュラーであるプレイやシーンや撮影方法やフレーズは先人たちの発明であるのだ。それをさらに進化させたもの、あるいはまったく別の物がもしかしたら明日生まれるかもしれない。

 そう、エロは人を動かす力を持っているのだ。

 エロ本が欲しくて遠くの自販機まで行ったり、大人っぽい服を着てポルノ映画館に入ったり、私も長年エロによって動かされてきたが、もっともそれを実感したのが1998年である。

 1998年といえば、「和歌山毒物カレー事件」が起こった年である。毒物混入の模倣犯も多く出現した。またダイオキシンが問題となり、テレビや新聞、雑誌を賑わせたのもこの年である。

 このような時代背景から、1998年の漢字は「毒」になった。

 なんとこの他にもあの「ドクター・キリコ事件」も起きている。この事件にも毒(自殺志願者に青酸カリを送っている)が関係している。

 毒に関する出来事はこれだけではない。あの反町隆史のシングル『POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~』も発売されているのだ。サビの部分で「ポイズン!」と力強く歌うこの曲は、「反町隆史」イコール「ポイズン」というイメージを私たちに植え付けた。

 そんな1998年に私は初めてパソコンを買った。もちろんエロ目的である。たしかNECのValueStarというパソコンで、20万円以上した記憶がある。当時の月収から考えるとかなり高価なものなのだが、エロのために奮発し、エロのために投資したのだ。

 まずインターネット。とにかくアイコラを見たかったのだ。プロバイダと契約し、ダイアルアップ接続で繋いだ。テレホタイム以外では高額な請求をされるから夜になると繋ぐのだが、その時間に日本中が集中するから回線が混んでなかなか画像は表示されないこともあった。

またパソコンでゲームをしたかった。もちろんエロゲーである。ちょうどビジュアルノベルが流行り出した頃で、家から出ずにやり続けた。やりたいゲームの為にメモリを増やしたり外付けハードディスクを買うなんてことも覚えた。

 エロのおかげで私はパソコンに関することを一気に覚えることができたのだ。

 まるで昨日のことのように書いたが、もう21年前のことである。当時せっせと保存した画像はまだ残っている。どれも粗くて見られるものではない。

Profile

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せきしろ

せきしろ

1970年北海道生まれ。文筆家。 著書に『去年ルノアールで』(マガジンハウス)、『不戦勝』(マガジンハウス)、『妄想道』(KADOKAWA)、『逡巡』(新潮社)、『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』(エンターブレイン)、『たとえる技術』(文響社)、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(双葉社)など。又吉直樹氏との共著の自由律俳句集に『カキフライが無いなら来なかった』(幻冬舎)、『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著に『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)がある。 2015年刊行の『海辺の週刊大衆』(双葉社)は又吉氏主演で映画化され、話題となった。最新作は『バスは北を進む』(幻冬舎文庫)。
Twitter:@sekishiro

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