せきしろのアダルトのある風景

あの頃、僕らのまわりには「アダルトのある風景」があったーー。 まぶしくて、恥ずかしくて、手の届かなかった、アレ。 文筆家のせきしろ氏が描く、アダルトにまつわる物語。

第13回「通販ビデオとプロレス」

 高校生の頃、裏ビデオが見たくて仕方なくなり、とうとう買うことにした。田舎に裏ビデオを売っている店などないから通販である。

 雑誌の広告を見て、その業者に切手を同封してカタログ請求をする。届いたカタログから欲しいものを選び、現金書留で送金する。すると念願の裏ビデオが送られてくるという流れだった。記憶は曖昧だが、たしか5本で1万円くらいだった気がする。

 裏ビデオを買いたい人を募り5人集まればひとり2000円で一本入手できる。まあまあ手頃な値段だ。私が提案すると5人はすぐに集まった。

 次にカタログや裏ビデオが届けられる場所を決めた。5人の中に一人暮らしをしている者はいなく、下宿している者はいたが郵便物は管理人さんが受け取って各部屋に分配するシステムであったため、中を見られることはないものの念のためやめた。

 結局、両親が共働きであるKという友人の家の住所を使うことになった。Kの家に郵便物が届く時間にKの両親はいないことは調査済みだったので安心だった。

 届いたカタログには淫靡なタイトルがずらりと並んでいた。写真はなく文字のみだった。そこで私たちは裏ビデオに関しての記事が載っている雑誌(たしか『オレンジ通信』)を参考にし、じっくりと吟味して、各自気に入った一本を選んだ。

 二週間後くらいにKから裏ビデオ到着の知らせを聞き、私たちはいてもたってもいられなくなり、みんなで学校を早退してKの家に行った。

 Kはプロレスが大好きで、特に全日本プロレスのファンで、テレビ中継をすべて録画していた。K以外も皆プロレスが好きだったが高校生になってプロレスから離れている時期だった。

 Kがビデオデッキに入れたのはなんとプロレスのビデオだった。「この試合が凄いんだ」「是非見てほしい」とかなんとか言ってプロレスを見せてきたのだ。時には一時停止や巻き戻したりしながらいろいろと解説してきた。

 こっちは裏ビデオが見たいわけだからKの手振り身振りを交えた解説などどうでも良かった。しかしKの機嫌を損ねると今後裏ビデオを買えなくなる可能性が出てくるので、私たちはスタン・ハンセンやテリー・ゴディや石川敬士をじっと耐えながら見たのである。

 約1時間後、やっと裏ビデオがビデオデッキに入れられた。業者に騙された、ということはなくどれも歴とした裏ビデオだった。

 内容はと言えば、当たりもあればハズレもあった。「この女の子、今何をやっているのだろう?」などもいろいろと考えさせられるものもあり、初めての裏ビデオは楽しいことばかりではなかった。でもすぐに慣れて、2回目の通販もして、またプロレスを見てから裏ビデオを見た。

Profile

Profile

せきしろ

せきしろ

1970年北海道生まれ。文筆家。 著書に『去年ルノアールで』(マガジンハウス)、『不戦勝』(マガジンハウス)、『妄想道』(KADOKAWA)、『逡巡』(新潮社)、『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』(エンターブレイン)、『たとえる技術』(文響社)、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(双葉社)など。又吉直樹氏との共著の自由律俳句集に『カキフライが無いなら来なかった』(幻冬舎)、『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著に『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)がある。 2015年刊行の『海辺の週刊大衆』(双葉社)は又吉氏主演で映画化され、話題となった。最新作は又吉氏との共著『蕎麦湯が来ない』(マガジンハウス)。
Twitter:@sekishiro

ご契約はこちらから

ご契約はこちらから WEBなら24時間受け付け

テレビでみるなら

WEBでのご加入はこちら

スマホ・PC・タブレットでみるなら

スカパー!アダルトオンデマンド 詳しくはこちら

閉じる