浜野さん(58歳=仮名)がこれから語るのは数年前の春、ちょうど花見の季節の仰天体験談だ。
「場所は伏せますけど、まあ、栃木で人気の花見スポットですよ。大変な人だかりでした」
タクシー運転手としてもこの時期はかきいれ時。花見帰りの客を拾うため、浜野さんもその周辺を回っていたという。
「時間は夜の9時過ぎだったかなぁ。3人組のお客さんを拾ったんですよ。30代の男性と、まだ大学生ぐらいの女の子、そして40代だろうね、見た目はごく普通の主婦っぽい女性でしたね。結婚指輪もつけていました」
3人組の場合、2人が後部座席、1人は助手席に座ることが多い。ところが、3人は揃って後部座席へ。
「花見の帰りみたいでしたけど、男性と女子大生っぽい女の子はあまり酔っておらず、落ち着いていましたね。ただ、40代の女性だけはベロベロ。ずっと大きい声でしゃべり散らしていました」
会話を聞いていると、女性2人は男性のことを「店長」と呼んでいたという。
「おそらく男性はスーパーかコンビニの店長じゃないかな。女性2人はパートとアルバイトなんでしょうね」
まず、最初に女子大生っぽい女の子を自宅まで送り届けた。
「そしたら、先ほどまでべらべらしゃべっていた40代のパート妻が途端に妖艶な雰囲気を醸し始めたんです。店長に体をベタ~と寄せて、『店長はどうして彼女いないのかなぁ。結構、格好いいと思うのに~』とかいって明らかに誘惑しているんです」
ルームミラー越しに店長の反応を伺うと、シャイなのか、それとも恐怖に身を竦めているのか、赤面してタジタジになっていたという。
「いやあ、ビックリしたねえ。3人のときはオバサン丸出しだったのに、若い女の子がいなくなった途端、発情した雌そのものでしたからね」
さらにその後がまたスゴかった。
「ねえ、店長~」
パート妻はさらに迫り、ついには店長の股間をズボンの上から撫で始めたという。
「いや……ちょっと」
店長は困り果てているものの、あまり強くは拒否できない様子。ついにはこのパート妻、店長のズボンのチャックの中に手を突っ込み、直接触り始めたようだった。浜野さんは注意しようかと思ったものの、パート妻は巧みに性器は露出させず、チャックに手を突っ込んだまま、揉みまくっていたとか。
「すごい、固くなってきた……」
パート妻が店長の耳もとで甘く囁く。もはや店長が落ちるのは時間の問題かと思われたが、
「あ、じゃあ、僕はこの辺で大丈夫です」
突如、我に返ったように店長は運転手の浜野さんに声をかけてきたそうだ。浜野さんがこう振り返る。
「さすがに店長もパートの奥さんに手を出すのはマズいと、最後の最後に理性が働いたんだろうね。逃げるように降りていきましたよ」
結局、最後はパート妻を1人送り届けることになったのだが、
「店長がいなくなるや、またしても普通の顔に戻って……スマホを取り出すと電話をかけて『あ~、あなた。いま帰っているところよ。ほんと、パートの付き合いって大変』って、ご主人と話していました。つい先ほどまで別の男のペニスを握っていたくせに」
浜野さんは生涯独身を貫こうと決意したという。