「こんなオジサン運転手でも、たまにエッチな相談をされるんですよ。とくに若い女性からは、男の気持ちを尋ねられることが多いですね」
ある年のクリスマスシーズンのこと。ドライバーの野島さん(57歳=仮名)は池袋駅前で、30代前半ぐらいのOLを乗せた。
「見た目はほんわかとした癒し系の美女でね。友達と飲んでいたみたいで、結構酔っぱらっていましたね。とはいえ、楽しい酔い方をされていて、僕にも饒舌に話しかけてくるんです」
そのうち、恋愛相談となった。
「いま付き合っている男性とイブを過ごす予定で、新宿の高級ホテルも予約していることを嬉しそうに言っていました」
野島さんは「羨ましいですね」などと言っていると、女性は急に後部座席から身を乗り出すようにして、
「そうだ、運転手さんに聞きたいんですけど……男の人は自分の出したものを飲んでもらえると、やっぱり嬉しいものですよね?」
酔っているとはいえ、突然、「ゴックン」に関する質問を振られて、野島さんは焦った。
「とてもそんな下ネタを話すようなタイプにも見えなかったので……(笑)。まあ、お客さんにすれば、タクシー運転手なんて一期一会。酔った勢いもあって、なかなか普段聞けないことを尋ねたくなったんでしょうね」
野島さんは正直に「そりゃあ、嬉しいと思いますよ」と答えた。
おそらく彼女は彼氏に精液を飲んで欲しい、と頼まれたのだろうと思っていた。
すると、女性は、
「ですよねー。私もそう思うんですけど、彼氏はすごく嫌がるんですよ」
意外や意外、彼女のほうはヤル気満々なのに、彼氏が拒否してくるというのだ。
「へえー。珍しいですね。でも、彼氏としては口で出すのがもったいないと思っているのかもしれませんよ」
口内射精よりも膣で射精したいという男の気持ちを伝えた。
「どうして勿体ないんですか?」
女性は不思議そうに聞いてくる。
「いや、その……まあ、男性は一度、出してしまうと、すぐには復活できませんから……」
女性客相手に、このような下品な話をしていいのものかと困惑しつつ、野島さんはモゴモゴと口籠りながら答えた。
「ん? 運転手さん、何か勘違いしていない?」
「え?」
「私は、オシッコの話をしているんだけど……」
野島さんが思わず急ブレーキを踏みそうになったのは言うまでもない。
「いやあ、ほんとあのときは、絶句しましたよ。あんな癒し系の綺麗なお姉さんが、実はそういう性癖があったなんて。聞くと、初めて付き合った彼氏がその手のプレイが好きだったそうで、彼女も癖になっているとか(笑)」
それ以来、酔っぱらった女性客から相談をされると、野島さんはビクビクするようになったという。