「最初は本当に具合が悪いのだと思っていました」
ドライバーの小早川さん(65歳=仮名)が変わったカップルを乗せたのは、昨年の6月のことだ。
千葉県にある温泉旅館から、お客さんを駅まで送ってほしいという迎車の連絡を受けたという。
「チェックアウトの時間からだいぶ過ぎていて、お昼過ぎでした」
旅館の前に到着すると、父と娘ほど年の離れた男女が待っていた。
「男性は50代ぐらいで、女性はまだ20歳前後の若い娘さんでしたね。だけど様子がおかしい。娘さんが男性によりかかるように抱きついていたんです」
ドアを開けると、男性がこういった。
「運転手さん。悪いけど、この子、ちょっと具合が悪くてね。後ろの席で横に寝かせてやりたいから、俺は助手席に座っていいかな」
「ええ、もちろん。大丈夫ですか?」
男性は女性を後部座席に寝かせると、助手席に乗り込んできた。
目的地は最寄りの駅までだった。
「お連れさん、大丈夫ですか? ずいぶんと具合が悪そうですね」
小早川さんは男性に尋ねる。
「まあ……、一時的に体調が悪いだけみたいなんで大丈夫ですよ。なあ」
男性は後ろを振り返りながら尋ねる。その瞬間、横たわっていた娘さんはビクッと肢体を震わせたという。
「大丈夫ですか、本当に」
ますます心配になる小早川さん。だが、男性はニヤニヤしながら、
「そうですねー。おい、お前、大丈夫か?」
別段心配している様子もない。それどころか、右手に何かリモコンのようなものを持っており、時折、ボタンを押しているのだ。
「ウ、ウン……アアッ!」
女性は横向きに寝ながら、なぜか股間のあたりを手で押さえていた。
「あのぉ……」
小早川さんはそのリモコンが気になって仕方ない。なぜなら男性がリモコンのボタンを押すたび、女性は変な反応をするからだ。
「どうしました?」
男性は何食わぬ顔で言いながらも、またもボタンを押す。
「アアアッ!」
明らかに女性は喘ぎ声を出しており、体調が悪いようには見えなくなってきた。
小早川さんはこういう。
「男性はお酒臭いし、娘さんも結構酔っているようでした。それだけならまだしも、あれは多分、遠隔操作のバイブを使って遊んでいたんだと思います。僕が心配するたび、男性はやたらニヤニヤしていたし、娘さんはわざとらしく悶えていたし……」
結局、本当のことは聞けないまま駅まで送り届けた。
タクシーから降りるときになって、女性は急にむっくりと起き上がり、
「ありがとうございました」
と妙に潤んだ瞳で、小早川さんにお礼を言ったという。
まったくトンデモない年の差カップルだ。
取材&記事:柚月怜(ゆづきれい)
20代の頃より「週刊大衆」の記者として、街の妖しい噂やエロスポットを中心に取材。官能作家として、著書『惑わせ天使』(双葉社刊)もある。